ついに紙ができた! (製紙プロジェクト2018)
2019年09月16日 ついに紙ができた! (製紙プロジェクト2018)
前回に引き続き、
製紙プロジェクトの奮闘についてご紹介します。
雑草をミキサーでペースト状にして水酸化ナトリウム溶液で煮込むことで、セルロース以外の成分を反応させて除去しようとしたわけですが、どれも緑色のぼろぼろした塊にしかならず、まるで草食動物のうんこにしか見えません。サトウキビバガスの紙はよくあるので、同じイネ科のカモガヤ(オーチャードグラス)などは簡単にできるだろうと高をくくっていた彼らは、いきなり壁にぶち当たってしまいました。
この時の迷走っぷりはかなりのもので、「先生、うんこにしか見えないということは、いっそうんこから紙を作るというのはどうでしょう?上野動物園でパンダか象のうんこをもらってきてください!」と真顔で言ってきたほどでした(象のうんこの紙は実際にあります)。
草は木材と比較すると圧倒的にセルロースの割合が少なく、セルロースを取り出すのにものすごく手間がかかったんですね。いろいろ試したのですが、最初に紙ができたのはなんとタンポポでした。
タンポポの葉はやわらかく、真ん中の葉脈くらいしか繊維ばっている部分はありません。案の定、煮込むとドロドロになってしまいました。ところが、ろ過するとごく小さな繊維が少しだけ取れたのです。煮込んだ後に残ったのは葉の裏に生えている毛。これから薄い、ティッシュペーパーのような紙ができたのでした。
成功したのはタンポポの葉、クローバーの茎、ワルナスビなど。一見、紙にはなりそうにもない植物たちです。
どうやらセルロース量や繊維の量が多いよりも、細胞を破壊しやすく繊維を容易に取り出せる植物のほうが紙にしやすかったようです。
欅の落ち葉も材料にしてみましたが、これはリグニン化が進行しているためか茶色いままで、ポロポロと崩れてしまい、紙にはなりませんでした。しかし、シュレッダー紙を混合することで紙にすることができ、重量で80%を落ち葉にしても「紙と言えるもの」を作ることができました(参考:環境・バイオ科での脱プラスチックの試み)。
実際に紙を作ってみると、ゴミを紙にするには問題がいくつかあることがわかります。
・安定して同じ品質の植物ゴミを得ることは難しい。
道路脇の除草や公園整備などを見ても、いろいろな草・木をまとめていっしょくたに処分している。タンポポだけ、ワルナスビだけを大量に得るのは無理。
・繊維を取り出す過程で相当なエネルギーとコストがかかる。
繊維を取り出しやすい植物でもかなりの量の水酸化ナトリウムと熱が必要になる。繊維量が多い植物では、より多くの水酸化ナトリウムと熱(あるいは物理的な操作)が必要になる。
・繊維を取り出したあとには廃液が残る。
今回の実験では、そもそも植物の量が少ないので廃液は中和して、水処理実験の曝気槽に廃棄したのですが、大量に作るとなると廃液の量もものすごく多くなります。
卒業展の発表では紙を作るところまでで精一杯だったのですが、紙から一歩進んでセルロースナノファイバー(CNF)をつくるにしても、生産するときには同じ問題が生じます。特に廃液の問題は木材由来のパルプよりもセルロースが少ない雑草などでは重要な問題になると考えられます。
今年のプロジェクトでは、この問題にどのような回答を提示してくれるのか、また、どのような奮闘をみせてくれるのか、ほんとうに楽しみにしています。
環境・バイオ科
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