「web卒業展」第8弾 セルロースナノファイバー編
2020年03月16日 「web卒業展」第8弾 セルロースナノファイバー編
「web卒業展」最後のプロジェクトの紹介になりました。
このブログで何度か取り上げてきた「廃棄資源から作るセルロースナノファイバーとその有用性」です。
このプロジェクトは既に何度もご紹介していますが、脱プラ・減プラを達成するための「製紙プロジェクト」から発展し、ただの紙ではなく、高機能新素材であるCNFをつくってみよう!というところから始まっています。したがって、原料にパルプではなく古紙や未利用植物を使うのが通常のCNF作成とは大きく異なる点です。
たったこれだけの違いですが、それが私たちを苦しめることになりました。
「透明な紙」はニンジンでも空心菜でも容易にできるのですが、これにはセルロース以外の多糖類が含まれ、どうしても粘っこい手触りになってしまいます。セルロースに富む維管束をメインにするために、茹でた空心菜を押しつぶしたり、アルカリで更に煮込んだり、次亜塩素酸ナトリウム溶液で処理したりと様々な方法を試しました。
また、シュレッダーくずは膨潤に大変な手間がかかる上にミキサーにかけると繊維が断片化してしまいます。ここの問題解決は一旦あきらめて、再生古紙で作られたトイレットペーパーを膨潤してTEMPO処理してみましたが、なかなかうまくいきません。解繊できればミキサーにかけた溶液がチキソトロピー性を示し、トロッとした感じに粘度が上がるはずなのですが、いつまでたっても濁ってサラッとした液体のままでした。更に乾燥してみると塩が多量に含まれるために結晶の粒ができてしまい、ザラザラなシートになってしまいました。
未来プロジェクトの「先端素材セルロースナノファイバーとプラスチック代替」にご協力いただくことになった北越コーポレーションの込山博士から助言していただいて、なんとかゲル状の溶液ができました。
これを乾燥してシートにすると、思いのほか高透明度のシートができました(込山博士も「思ったより透明にですね」と言われてました)が、乾燥の際にゆがみが出て、トレーからはがれて割れたり破けたりする部分ができてしまうことがわかりました。
一方、空心菜はどうにも繊維が細くできず、紙?っぽいシートになってしまいました。
トイレットペーパーから作ったCNFシートを加工してみようとしたのですが、引っ張りや折り曲げには強いCNFも裂く力には非常に弱く、ねじれたところに力を加えると容易に裂けてしまいます。また、曲げる際に力のかかり方に偏りが出ても、その場所から破壊されてしまいます。大きな板で全体を均一に折り曲げることはできますが、指で曲げようとすると指の部分だけに力がかかるので避けてしまいます。
せっかく作った大きなシートもどんどん小さくなってしまいました。
北越コーポレーションのCNF製品である「バルカナイズドファイバー」は100年以上昔からある素材ですが、紙の繊維の間をCNFが埋める構造をとっていることがわかっています。この固い素材は水に浸すことで柔らかく加工できるようになり、加工後に乾燥すると形状をキープできるようになります。
そこで、机上の消毒に使うエタノールスプレーを使い、シート全面を均一に濡らしました。すると容易に曲げることができるようになりました。こうしてバッグ、ストロー、折り鶴を作ることができました。
ただし、シートのゆがみは乾燥と共に元に戻るため、折り曲げると乾くにつれて力がかかり、弱いところが破壊されるケースがありました(折り鶴のくちばしなど)。
現在のCNF開発はプラスチックとの複合材として、軽くて丈夫であるという特性を生かす方向で進められています。しかし現在の脱プラの流れから考えると、複合材の相手として生分解性プラスチックとの複合材で生かしていくことが長期的には必要になると思います。現在の生分解性プラスチックは種類や機能が限定されているので、これらの新規開発や、複合材にした時の分解のしかたの研究などが今後のポイントになってくるのではと思います。
また、CNFは要するに「紙」なので導電性が無いことから電子基板を作るためのシートとしての可能性が検討されています。本プロジェクトで作ったトイレットペーパーCNFに導電性インクで回路を描いてみたところ、見事にLEDを点灯することができました。
本プロジェクトは引き続き呑川浄化空心菜プロジェクトと並行し、未利用資源だけでなく新たな循環システムを提案できるように進めていきたいと考えています。
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環境・バイオ科
どんな学科か知りたい方はこちら(環境・バイオ科web)
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このブログで何度か取り上げてきた「廃棄資源から作るセルロースナノファイバーとその有用性」です。
このプロジェクトは既に何度もご紹介していますが、脱プラ・減プラを達成するための「製紙プロジェクト」から発展し、ただの紙ではなく、高機能新素材であるCNFをつくってみよう!というところから始まっています。したがって、原料にパルプではなく古紙や未利用植物を使うのが通常のCNF作成とは大きく異なる点です。
たったこれだけの違いですが、それが私たちを苦しめることになりました。
「透明な紙」はニンジンでも空心菜でも容易にできるのですが、これにはセルロース以外の多糖類が含まれ、どうしても粘っこい手触りになってしまいます。セルロースに富む維管束をメインにするために、茹でた空心菜を押しつぶしたり、アルカリで更に煮込んだり、次亜塩素酸ナトリウム溶液で処理したりと様々な方法を試しました。
また、シュレッダーくずは膨潤に大変な手間がかかる上にミキサーにかけると繊維が断片化してしまいます。ここの問題解決は一旦あきらめて、再生古紙で作られたトイレットペーパーを膨潤してTEMPO処理してみましたが、なかなかうまくいきません。解繊できればミキサーにかけた溶液がチキソトロピー性を示し、トロッとした感じに粘度が上がるはずなのですが、いつまでたっても濁ってサラッとした液体のままでした。更に乾燥してみると塩が多量に含まれるために結晶の粒ができてしまい、ザラザラなシートになってしまいました。
未来プロジェクトの「先端素材セルロースナノファイバーとプラスチック代替」にご協力いただくことになった北越コーポレーションの込山博士から助言していただいて、なんとかゲル状の溶液ができました。
これを乾燥してシートにすると、思いのほか高透明度のシートができました(込山博士も「思ったより透明にですね」と言われてました)が、乾燥の際にゆがみが出て、トレーからはがれて割れたり破けたりする部分ができてしまうことがわかりました。
一方、空心菜はどうにも繊維が細くできず、紙?っぽいシートになってしまいました。
トイレットペーパーから作ったCNFシートを加工してみようとしたのですが、引っ張りや折り曲げには強いCNFも裂く力には非常に弱く、ねじれたところに力を加えると容易に裂けてしまいます。また、曲げる際に力のかかり方に偏りが出ても、その場所から破壊されてしまいます。大きな板で全体を均一に折り曲げることはできますが、指で曲げようとすると指の部分だけに力がかかるので避けてしまいます。
せっかく作った大きなシートもどんどん小さくなってしまいました。
北越コーポレーションのCNF製品である「バルカナイズドファイバー」は100年以上昔からある素材ですが、紙の繊維の間をCNFが埋める構造をとっていることがわかっています。この固い素材は水に浸すことで柔らかく加工できるようになり、加工後に乾燥すると形状をキープできるようになります。
そこで、机上の消毒に使うエタノールスプレーを使い、シート全面を均一に濡らしました。すると容易に曲げることができるようになりました。こうしてバッグ、ストロー、折り鶴を作ることができました。
ただし、シートのゆがみは乾燥と共に元に戻るため、折り曲げると乾くにつれて力がかかり、弱いところが破壊されるケースがありました(折り鶴のくちばしなど)。
現在のCNF開発はプラスチックとの複合材として、軽くて丈夫であるという特性を生かす方向で進められています。しかし現在の脱プラの流れから考えると、複合材の相手として生分解性プラスチックとの複合材で生かしていくことが長期的には必要になると思います。現在の生分解性プラスチックは種類や機能が限定されているので、これらの新規開発や、複合材にした時の分解のしかたの研究などが今後のポイントになってくるのではと思います。
また、CNFは要するに「紙」なので導電性が無いことから電子基板を作るためのシートとしての可能性が検討されています。本プロジェクトで作ったトイレットペーパーCNFに導電性インクで回路を描いてみたところ、見事にLEDを点灯することができました。
本プロジェクトは引き続き呑川浄化空心菜プロジェクトと並行し、未利用資源だけでなく新たな循環システムを提案できるように進めていきたいと考えています。
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